寒さが厳しい北欧では、冬になると体を温める飲み物が食卓に並びます。その代表格が、スパイスの豊かな香りが広がるホットワイン「グロッグ(Glögg)」です。
現在ではクリスマスに欠かせない冬の風物詩として親しまれていますが、その歴史は数百年前までさかのぼります。

昔から冬を楽しむ工夫があったんですね
この記事では、グロッグの起源や名前の由来、クリスマスの定番になった理由などをたどりながら、北欧の冬文化をご紹介します。
- グロッグの起源と歴史
- クリスマスの飲み物として親しまれるようになった理由
- 名前の由来と「Grog」との違い
- 現代まで受け継がれてきた北欧の冬文化
グロッグとは?北欧で親しまれる冬の伝統飲料
グロッグ(Glögg)は、北欧の冬を代表する温かい飲み物。
クリスマスシーズンになると家庭やクリスマスマーケット、レストランなどさまざまな場所で楽しまれ、冬の訪れを感じさせる存在となっています。
グロッグはどんな飲み物?
グロッグは、赤ワインにシナモンやカルダモン、クローブなどのスパイスを加えて温める、北欧の伝統的なホットワインです。
家庭によってレシピはさまざまですが、飲む直前にレーズンやアーモンドを加えるのがスウェーデンでは定番のスタイル。
スパイスの香りとワインのやさしい甘みが広がり、寒い冬にぴったりの一杯として親しまれています。
近年ではアルコール入りだけでなく、ぶどうジュースやりんごジュースを使ったノンアルコールのグロッグも人気があり、子どもから大人まで家族みんなで楽しめる飲み物になっています。
北欧の冬に欠かせない理由
グロッグが特別な存在となった背景には、北欧の長く寒い冬があります。
日照時間が短くなる季節には、家族や友人と温かい飲み物を囲みながらゆっくり過ごす時間が大切にされてきました。
クリスマスを迎えるまでのアドベントには家庭でグロッグを楽しむ機会が増え、街ではクリスマスマーケットでも湯気の立つグロッグが振る舞われます。
キャンドルの灯りやジンジャークッキーとともに味わうグロッグは、北欧の冬らしい風景のひとつ。
寒さを和らげるだけでなく、人が集まり、会話を楽しむきっかけとなる飲み物として、今も多くの人に親しまれています。
グロッグの歴史は16世紀までさかのぼる
グロッグの起源は、16世紀頃までさかのぼるといわれています。
当時の北欧では、ワインにスパイスや甘みを加えて楽しむ文化がありました。
現在のような「クリスマスの飲み物」という形になるまでには、王室での楽しみや、冬を乗り越えるための知恵など、長い歴史が積み重なっています。
グスタフ1世も愛飲したという伝説
グロッグの歴史を語る上でよく紹介されるのが、スウェーデン王グスタフ1世(グスタフ・ヴァーサ)との関わり。
16世紀にスウェーデンを統治したグスタフ1世が、スパイスを加えた温めたワインを好んで飲んでいたという逸話が残っています。
当時、シナモンやクローブ、カルダモンなどのスパイスは遠い地域から運ばれる貴重な品。
スパイス入りのワインは誰もが気軽に楽しめるものではなく、王室や裕福な人々の間で楽しまれる特別な飲み物でした。
寒い冬に香り豊かなワインを味わう習慣は、こうした上流階級の文化から少しずつ広がっていったと考えられています。
当時は薬用酒としても飲まれていた
グロッグの原型となったスパイス入りのワインは、楽しみのためだけではなく、体を整えるものと考えられていました。
当時のヨーロッパでは、スパイスには体を温めたり、健康を支えたりする力があると信じられ、シナモンやクローブなどは薬として貴重な材料だったのです。
また、ワインにスパイスや甘みを加えることには、保存性を高めたり、味を整えたりする意味もありました。
寒い季節に温めたワインを飲む習慣は、冬を快適に過ごすための知恵のひとつでもあったのです。
現在のグロッグはクリスマスを彩る楽しい飲み物ですが、その背景には、長い冬を乗り越えるための暮らしの工夫が込められています。

昔はお酒も薬のような存在だったんですね
「グロッグ」という名前の由来
グロッグという名前には、北欧ならではの歴史が隠されています。
英語にも「Grog(グロッグ)」という言葉がありますが、実はスウェーデンのグロッグとは別の飲み物。
名前が似ているため混同されることもありますが、それぞれ異なる文化の中で生まれました。
スウェーデン語の「glödgad vin」が語源
スウェーデン語の「Glögg」という名前は、「glödgad vin(グルーダッド・ヴィーン)」という言葉に由来するとされています。
「vin」はスウェーデン語で「ワイン」を意味する言葉。「glödgad」は「熱した」「焼きなました」という意味を持つため、「glödgad vin」は直訳すると「温めたワイン」という意味になります。
寒い季節にワインを温め、スパイスや甘みを加えて楽しむ習慣がそのまま名前として残り、現在の「Glögg」という呼び方につながっています。
ただ温めるだけではなく、香り豊かなスパイスを加えることで、冬の長い時間を楽しむ特別な飲み物へと発展していきました。
英語の「Grog」とは別の飲み物
「Glögg」とよく似た名前を持つ「Grog」は、イギリス海軍で生まれた別の飲み物です。
18世紀頃、イギリス海軍ではラム酒を水で薄めた飲み物が飲まれており、これが「Grog」と呼ばれるようになりました。
一方、北欧のGlöggはワインにスパイスを加えて温めた飲み物です。名前の響きは似ていますが、誕生した背景も使われるお酒も異なります。
| Glögg(グロッグ) | Grog(グロッグ) | |
|---|---|---|
| 発祥 | スウェーデンなど北欧 | イギリス海軍 |
| ベース | ワイン | ラム酒 |
| 特徴 | スパイスを加えて温める | ラム酒を水で割る |
| 文化 | クリスマスや冬の風物詩 | 船上で飲まれた習慣 |

同じ名前でも全然違う飲み物なんですね
王室から一般家庭へ広がったグロッグ
長い間、特別な飲み物として楽しまれてきたグロッグは、19世紀頃になると少しずつ一般の人々にも広がっていきます。
王室や裕福な家庭だけのものだった飲み物が、クリスマスの季節を彩る国民的な習慣へ変化していきました。
19世紀にクリスマスマーケットで人気に
19世紀末になると、グロッグはクリスマスマーケットなどでも販売されるようになり、多くの人が楽しめる飲み物になりました。
ワイン商や薬剤師などが、スパイスを加えた温かいワインを屋台で提供したことが、一般家庭へ広がるきっかけのひとつとされています。
寒い冬の街で湯気の立つグロッグを片手に過ごす時間は、次第にクリスマスの風景として定着していきました。
家庭でも楽しまれる冬の定番へ
現在では、グロッグはスウェーデンをはじめとする北欧の家庭で親しまれる冬定番の飲み物。
市販のグロッグベースも販売されており、家庭ごとにスパイスの配合や甘さを調整して楽しむこともあります。
また、アルコールを使わないノンアルコールのグロッグも広まり、子どもから大人まで一緒に味わえる飲み物になりました。
数百年前に生まれた温かな一杯は、今もクリスマスの食卓や人が集まる時間を彩る、北欧の冬文化の象徴となっています。
現代のグロッグはアルコールだけじゃない
長い歴史を持つグロッグですが、現代では大人だけが楽しむ飲み物ではありません。
家庭で気軽に味わえるようになった影響で、子どもから大人まで一緒に楽しめる冬の定番飲料として親しまれています。
子ども向け・ノンアルコールも人気
北欧では、ワインを使わずに作るノンアルコールのグロッグも人気。
ぶどうジュースやりんごジュースをベースに、シナモンやカルダモン、クローブなどのスパイスを加えることで、グロッグらしい香りや温かみを楽しむことができます。
アルコール入りのグロッグと同じように、クリスマスの集まりや家族の時間に用意されることも多く、子どもから大人まで同じ食卓を囲める飲み物として定着しました。
北欧ではクリスマスの香りそのもの
グロッグの魅力は、味わいだけではありません。
シナモンやカルダモン、クローブなどのスパイスが広がる香りは、北欧の人々にとってクリスマスの訪れを感じさせる大切なものです。
キャンドルの灯りの中で温かいグロッグを囲み、家族や友人と会話を楽しむ時間は、北欧の冬らしい過ごし方のひとつ。
忙しい日常から少し離れ、温かい飲み物を片手にゆっくり過ごす時間には、Fikaにも通じる「心地よいひと休み」の文化があります。

香りだけでクリスマスを思い出します
日本でもグロッグを楽しむには?
本場の雰囲気を再現する基本の楽しみ方
グロッグは北欧の冬を象徴する飲み物ですが、日本でも身近な材料を使って楽しむことができます。
本場のようにスパイスを揃えた本格的な作り方から、家庭にあるジュースを使ったアレンジまで、楽しみ方はさまざまです。
赤ワインにシナモンやカルダモンなどのスパイスを加えて温めれば、北欧のクリスマスマーケットで味わうような雰囲気を楽しめます。
空間づくりでさらに北欧気分に
キャンドルを灯したり、北欧の食器や雑貨を取り入れたりすることで、飲み物だけではなく、グロッグを囲む空間そのものを楽しむことができます。
大切なのは、同じ飲み物を味わいながら、家族や友人とゆっくり過ごす時間。北欧で大切にされてきた冬の習慣を、日本の暮らしにも取り入れることができます。
おわりに
グロッグは、単なる温かいワインではなく、北欧の冬の暮らしや文化が詰まった伝統的な飲み物。
その歴史は16世紀までさかのぼり、王室で楽しまれていた時代から、クリスマスマーケットを通じて一般の家庭へ広がっていきました。
長い年月をかけて形を変えながらも、家族や友人と温かい飲み物を囲み、ゆっくりと時間を過ごす習慣は今も受け継がれています。
クリスマスの香りを感じさせるスパイス、キャンドルの灯り、冬の静かな時間。グロッグには、北欧の人々が大切にしてきた「冬を楽しむ工夫」が込められています。

一杯のグロッグにも、何百年もの歴史があるんですね
Glögg – allt du vill veta om glögg | BLOSSA | folk o folk

参考にさせていただきました

