スウェーデンでは、12月13日に「ルチア祭」という冬の伝統行事が行われます。
白い衣装を着たルチアを先頭に、ろうそくを灯して歌を歌う行列が特徴で、学校や教会、職場など、さまざまな場所で親しまれてきました。
ルチア祭の由来は、キリスト教の聖人である聖ルチア。
もともとは遠く離れたシチリアに生まれた聖人ですが、スウェーデンでは長い年月をかけて独自の文化として定着していきました。

ろうそくを灯して歌うなんて冬らしい行事ですね
この記事では、聖ルチアの祝日がスウェーデンに伝わった背景から、地域に残る冬の習慣、19世紀以降のルチアの行事、そして現代のルチア祭へと続く歴史を紹介します。
- 聖ルチアと12月13日の関係
- ルチアの風習がスウェーデンでどのように変化したのか
- 白い衣装やろうそくを身につけるルチアが生まれた背景
- 現在のルチア祭が形づくられるまでの歴史
ルチア祭とは?スウェーデンの冬を彩る「光の行事」
ルチア祭は、毎年12月13日に行われるスウェーデンの伝統行事。
現在よく知られているのは、白い衣装をまとったルチアを先頭に、付き添いの女性たちや星の少年たちなどが続く「ルチア行列」。
ろうそくを手に歌を歌いながら進み、クリスマスの歌が一緒に歌われることもあります。
この現在のような形式が広く定着したのは20世紀に入ってから。1950年代には、白い衣装とろうそくの冠をつけたルチアを中心とする行事が、スウェーデン各地で一般的になりました。
12月13日に行われるルチア祭
12月13日は、聖ルチアの祝日です。
聖ルチアは、現在のイタリア・シチリア島にあるシラクサで暮らしていたとされるキリスト教の聖人。
伝承では、3世紀末から4世紀初めに生き、キリスト教を信仰したことから殉教したとされています。
そのため、ルチア祭のもともとの背景にはキリスト教の聖人を祝う日としての意味があります。スウェーデンでは、その祝日が冬の民間文化と重なり、現在のルチア祭へと発展していきました。

12月13日はルチアさんの日なんですね
白い衣装とろうそくの行列
現在のルチア祭で特に印象的なのが、白い衣装と頭に載せたろうそくの冠。
ルチアの後ろには、ろうそくを手にした女性たちや、星の形をした帽子をかぶった「星の少年たち」などが続きます。
歌声とろうそくの光が組み合わさった行列は、現在のルチア祭を象徴する光景です。
ただし、最初から現在と同じ姿だったわけではありません。
白い衣装のルチアが登場する古い記録もありますが、現在のようなルチア行列が一般的になるまでには、さまざまな習慣が重なっています。
学校や教会、職場でも親しまれる行事
現在のルチア祭は、宗教施設だけで行われるものではありません。
学校や職場、病院、介護施設、家庭などでも行われ、テレビでもルチアの行列が紹介されます。子どもたちが参加する身近な冬の行事としても定着しています。
宗教的な由来を持ちながら、現在ではスウェーデンの文化や季節行事として楽しむ人も多いことが、ルチア祭の特徴です。

いろいろな場所で楽しめる行事なんですね
聖ルチアとは?ルチア祭の名前になった聖人
ルチア祭の「ルチア」とは、現在のイタリア・シチリア島にあるシラクサで暮らしていたとされる聖人、聖ルチアのこと。
3世紀末から4世紀初めに生きたキリスト教徒の女性で、当時のローマ帝国ではキリスト教が迫害されていました。ルチアも信仰を理由に処刑されたとされ、304年12月13日に亡くなったと伝えられています。
その後、ルチアはキリスト教の聖人となり、12月13日は聖ルチアの祝日として定められました。
スウェーデンでもカトリック時代の暦に12月13日の聖ルチアの日が記されています。

遠いシチリアの聖人がスウェーデンの行事になるのが不思議ですね
シチリアで生きた聖ルチア
聖ルチアについて残されているのは、史実だけではありません。
伝説では、裕福な家に生まれたルチアはキリスト教への信仰を強く持ち、財産を貧しい人々のために使ったとされています。
結婚を望まず、信仰を守ろうとしたことから、婚約者によってキリスト教徒であることを告発されたという物語も残されています。
その後の物語には、火に投じられても炎に焼かれなかったことや、最後には剣によって命を奪われたことなど、さまざまな奇跡が登場します。
「Lucia」の由来
「Lucia」はラテン語の lux(光) と結びつく名前。そのため、聖ルチアは古くから「光」と関連づけて語られてきました。
一方、スウェーデンのルチア祭で見られる「頭にろうそくを載せたルチア」は、聖ルチアの時代から続くものではありません。
ルチアの伝説や名前の意味に加え、スウェーデンに古くからあった12月13日の民間習俗など、さまざまな要素が重なって、現在のルチアの姿が形づくられていきました。
なぜスウェーデンでルチア祭が祝われるように?
現在のルチア祭は、ひとつの時代に突然生まれたものではありません。
聖人の祝日、スウェーデンの農村文化、キリスト教の行列、そして近代のメディアなど、異なる時代の習慣が重なりながら形づくられてきました。
シチリア島のシラクサで暮らしたとされる聖ルチア。
キリスト教の聖人となり、12月13日が祝日として知られるようになります。
カトリックの時代、12月13日はスウェーデンでも聖ルチアの日として知られていました。
一方で、この時期のスウェーデンには12月13日にまつわる独自の民間習俗もありました。
18世紀になると、現在のルチア祭を思わせる姿も記録に登場します。
1764年には、スウェーデン西部の上流階級の邸宅で、白い衣装を着て翼をつけたルチアが朝に人々を訪ね、食べ物を届けたという記録も。
ただし、この頃のルチアの姿と、現在の厳かなルチア行列は同じものではありませんでした。
現在のルチア祭につながる重要な変化が起きたのが19世紀。
スウェーデン西部では、12月13日に仮装して村を歩く「ルッセ」の風習がありました。
食べ物や飲み物を求めて家々を訪ねるなど、現在のルチア祭とはかなり異なる、にぎやかな行事だったとされています。
そこには「ルッセの花嫁」と呼ばれる人物も登場しました。
この時代のルチアは、聖人としてのルチアとは必ずしも同じ存在ではありません。
聖人の祝日と、地域に伝わっていた冬の民間行事が重なりながら、少しずつ現在のルチア祭につながっていきました。
スウェーデンのスキンシカットベリで、白い衣装を着て頭に光をつけたルチアの記録があります。
興味深いのは、このルチアが女性ではなく男性の農場労働者だったこと。
当時のルチアには、現在のように「女性が演じるもの」という固定された形はありませんでした。
ストックホルムの野外博物館スカンセンでスウェーデン各地の昔の暮らしや風習を紹介する取り組みが行われており、西スウェーデンのルチアの風習もそのひとつとして紹介されました。
こうして、それまで地域によって異なっていたルチアの風習が、より広い地域へ知られるきっかけが生まれます。
新聞社の「ストックホルムス・ダーグブラード」がルチアのコンテストを開催しました。
選ばれたルチアが電飾をつけた冠をかぶって行列をしたことをきっかけに、ほかの新聞社も同様の企画を行うようになります。
ルチアは新聞やメディアを通して、多くの人が知る存在になっていきました。
白い衣装のルチアを中心に、付き添いの女性たちや星の少年たちなどが続く、現在に近いルチア行列が一般的になりました。
学校や職場などにも広がり、現在のスウェーデンを代表する冬の行事として定着していきます。

今の形になるまで長い時間がかかったんですね
なぜ12月13日?ルチア祭と冬の「光」
ルチア祭が行われる12月13日は、スウェーデンの冬の暮らしと深く結びついた日です。
もともとはキリスト教における聖ルチアの祝日にあたり、そこに古い暦や冬の民間習俗が重なってきました。
現在のルチア祭で印象的な「光」も、ひとつの由来だけから生まれたものではありません。
12月13日は聖ルチアの祝日
12月13日は、シチリア島のシラクサで殉教したとされる聖ルチアの祝日です。
カトリックの教会暦では、聖ルチアを記念する日として12月13日が定められています。この祝日はスウェーデンにも伝わり、12月13日という日付が長く残ることになりました。

聖人の日が冬の習慣と重なったのですね
古い暦では冬至に近い時期だった
もう一つ重要なのが、ユリウス暦。
現在スウェーデンで使われているグレゴリオ暦とは異なり、かつて使われていたユリウス暦では、12月13日ごろが冬至の時期にあたっていました。
そのため、ルチアの夜は「一年で最も長い夜」と考えられていたのです。
グレゴリオ暦が導入され、冬至が12月21日前後になったあとは、12月13日が「一年で最も暗い時期の重要な夜」という記憶は、民間の習慣として残りました。
12月13日の夜にまつわる冬の習慣
昔のスウェーデンでは、12月13日の夜は超自然的な存在が現れるという民間信仰が伝わっていたため、夜通し起きて過ごす「ルッセヴァーカ(lussevaka)」という習慣がありました。
農作業が一段落する冬の時期でもあり、人々は食事や飲み物を用意しながら長い夜を過ごします。
現在のルチア祭の静かで明るい雰囲気とは対照的に、かつての12月13日は、長い夜や冬の不安を強く意識する日だったのです。

昔は夜を無事に越すための日だったのですね
さいごに
スウェーデンのルチア祭は、シチリアの聖人ルチアを起源のひとつとしながら、スウェーデンの冬の習慣や地域文化と結びつき、長い時間をかけて現在の形へと変化してきました。
12月13日の聖ルチアの日に、古い暦における冬の節目や長い夜にまつわる民間習俗が重なり、19世紀以降には白い衣装やろうそくを使ったルチアの行事が広がっていきます。
寒く暗い冬のなかで、光を灯し、歌を聴き、温かな食べ物を囲む。ルチア祭には、長い冬を過ごすスウェーデンならではの時間の楽しみ方も息づいています。
聖人の祝日から始まった一日が、地域の習慣や冬の暮らしと結びつき、今では多くの人が集まる季節の行事になっていることも、ルチア祭の大きな魅力です。

いろんな文化が重なって今の形になったんですね」

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